青と黄色のあいだ

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サラミに見えるおじさんの耳について

突然ですが最近、おじさんの耳がサラミに見えて仕方がない。

正しく言えば「おじさんの耳の裏側の皮」がサラミのように見える。

 

見えるようになった始まりは、家に帰るために乗っている電車の中だった。目の前に赤ら顔のおじさんが立っていた。おじさんからはお酒の匂いがして、耳まで赤くて、いい感じに酔っ払っていた。

その真っ赤になったおじさんの耳をぼーっと見ていた。

おじさんの年齢はおそらく50歳を超えていて、耳にはシワがよっていた。ああ、歳はこんな耳の裏側の皮膚にまできちんと現れるのだな、歳をとるのはなんて残酷なことなんだろう。でもおじさんは自分で耳の裏側を見ることなど出来はしないから、この事実に気づいていない。それはちょっとかわいそうなことだな、側から見たらぼーっと目の前のおじさんを見つめている私の頭の中では、そんな考えが止まることなく、ぐるぐると回っていた。

そうしたら気付いてしまったのだ。耳の裏側の皮ってすごく硬そうということに!

触れることはないから本当に硬くなっているのかどうかは分からないが、皮膚の厚みは私が知っている耳の裏側のそれではないし、足の裏の皮が硬くなっていくように、きっと耳の裏側の皮膚も厚みを増していくに違いない。また私はそんなことを考えた。

おじさんの耳の裏側の皮膚ひとつでこんなに考えてしまう自分を気持ち悪いなと思いながらも、まだまだおじさんの耳の裏側の皮膚について考えることはやめられなかった。

皮膚にシワがよっている、そして硬そう…さらに酔っ払っていて耳全体が赤い。そうして頭の中でおじさんの耳の裏側の皮膚の特徴を並べてみると、私はこの特徴のあるものを知っている、ということに気付く。

そう、それがサラミなのである。

こうして私がおじさんの耳の裏側の皮膚がサラミであることに気付いてしまってから、夜の時間の電車に乗るたび、おじさんの耳の裏側を探してしまう。ああこの人もサラミ、この人もサラミ、でもこの人はサラミじゃない…。

サラミ探しをする自分が怖くなって、若い男性の耳の裏側も確認する。サラミではなくてなんだか安心する。サラミになっている耳の裏側の方が少ないのだ。でもだからこそ、サラミを探してしまうのかもしれない。

今日もサラミを探してしまったし、明日も探してしまうだろう。飽きるまで、おじさんの耳の裏側にあるサラミ探しをやめられそうにない。